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山の音

2013年7月31日

長谷の甘縄神明宮(以下、甘縄神社)は、川端康成の小説『山の音』の主人公宅の、
裏山にある神社として描かれていることで知られています。
川端邸が甘縄神社の鳥居脇にあることも含めて、観光案内のひとつとして語られるエピソードです。

「八月の十日前だが、虫が鳴いている。
木の葉から木の葉へ夜露の落ちるらしい音も聞こえる。
そうして、ふと信吾に山の音が聞こえた。」
「鎌倉のいわゆる谷の奥で、波が聞こえる夜もあるから、
信吾は海の音かと疑ったが、やはり山の音だった。」
(川端康成『山の音』より引用)

小説を読めば、甘縄神社周辺の実際のロケーションと物語の風景がオーバーラップして、
川端康成氏が過ごした時代の鎌倉長谷での暮らしが感じられます。

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境内の木陰のベンチに腰掛ければ、小説の中の風景の中に居るようです。

『山の音』は映画にもなっています。小説とは内容にいくらか違いがあります。
私個人としては映画の結末の方が好みです。

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監督 成瀬巳喜男、出演者 原節子、山村聡、 上原謙

余談ですが、
甘縄神明宮の境内にある「長谷公会堂」。
川端康成氏がおいでのころ、この公会堂の看板を書いてくださったそうです。
現在は川端先生直筆の看板は取り外され、甘縄神社内で大切に保管しているそうです。
ノーベル文学賞作家の長谷での日常が感じられるエピソードですね。

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長谷公会堂。地域の会合などに利用されています。