長谷時間

鎌倉・長谷界隈に流れる時間を感じてもらいたい。そんな想いから生まれました。
まちの商店主たちがメディアには載らないようなちょっとおもしろい話や想い出などをご紹介しています。

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猫のまなざし -2-

2019年6月02日

三月。鎌倉の小学生だった自分は何をしてただろうと思い浮かべると、そわそわ?ふわふわ? 自然に外に出て行った記憶が体の奥で動き出す。

昭和30年第40年代の鎌倉の子供の外での冬の遊びはコマ回しと決まっていた。今では高価な特産品となっているらしい木製の大山ゴマだ。あの頃はそれがどこにでも売られていて、子供達が簡単に買えて何個も持っていた。直径10~20センチ、その大きさのコマをぶつけ合う。やっているとすぐに体が熱くなった。

コマは春になると終わった。コマ以外にもいろいろな遊びが出来るようになるからだろう。冬の曇った海岸なんてホントに寒くて長くはいられなかった。春は日差しがなくても子供にはじゅうぶんな暖かさだ。家の中で遊ぶことはほとんどなくなった。長谷の子供たちの遊び場は、観音の境内、大仏の駐車場と周辺の路地、甘縄神社の境内……と、さすが神社仏閣が多い。今ほど境内にいろいろな碑とかそういうものが建ってなかったから広々していた、と同時に起伏がいっぱいだから〈ドロケン〉やるにも〈ポコペン〉やるにも絶好だった。ドロケンは泥棒と警察がなまった2組に分かれた集団鬼ごっこ、ポコペンは缶蹴りの変形の隠れん坊でこれは鎌倉独特の遊びかもしれない。

日曜日は野球もやった。私が小3のとき和田君という中3のリーダーがいて、学年ばらばらの10人以上の集団でワイワイ浜まで行って三角ベースをやった。やってると浜まで散歩にきた近所の兄ちゃん、おじさんが混ざる。小3の私は途中からオミソ扱いだったが、大人たちの中にいるだけで楽しかったな。

ところで鎌倉の山は落葉しない常緑樹が中心だ。だから秋の山はほとんど紅葉しない。ひと冬あまり活動していなかったくすんだ葉が山を被っている。常緑樹とはいっても春先の葉はモスグリーンに感じる。落葉樹の山とはまた別の、静かに眠っている感じがある。三月のうらうら暖かく風のない日に鎌倉で山を見ているとなんとも、ものがなしい気分になる。

間違わないでほしいのだが、「ものがなしい」は「悲しい」とは違う。もっとずっと深く、生きることの奥に横たう感覚だ。薄く雲に被われた乳白色の空の下、風がなく体は緩み、意識せずにどこからか漂ってくる花の香りを感じている。山は静かにそこにある。

 

<プロフィール>

保坂和志(ほさかかずし)

小説家。1956年山梨県生まれ。幼少時。鎌倉長谷に転居。

長谷幼稚園。第一小学校。栄光学園中学・高校、早稲田大学卒。

90年「プレーソング」で小説家デビュー。

95年「この人の閾(いき)」で芥川賞、

97年「季節の記憶」で谷崎潤一郎賞・平林たい子文学賞、

2013年「未明の闘争」で野間文芸賞を受賞。猫好きとして知られる。

2018年「こことよそ」で川端康成賞を受賞

鎌倉はせのわ

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